食用油の劣化と酸素(その2)

 「油脂の劣化を極力抑えたい。」

 食品に携わる技術者であれば誰でも思ったことがあると思います。

 そのためには、やはり「酸素」と油脂との接触をどう抑えるかが重要になってきます。

 前回のコラム「食用油の劣化と酸素(その1)」では、油を塗した「あられ」の包装パッケージ内の酸素濃度と過酸化物価による劣化の関係について述べました。

 そして、製品形態での容器内の酸素コントロールが、保存品質に大きな影響を与えることについても述べました。

 今回のコラムでは、食品包装内での「脱酸素剤」の効果について、述べてみたいと思います。

 脱酸素剤は油脂のみならず、食品の劣化を抑える目的で包装容器内に入っていることがありますが、例えば、三菱ガス化学株式会社製の製品名「エージレス®」は良く知られた脱酸素剤であると思います。[1]

 脱酸素剤は、主成分は大別すると活性酸化鉄系とアスコルビン酸系の二種類があり、これらの酸素を化学的に吸収する素材を、酸素を通すことができるパック(小袋)に封入したものです。

 この脱酸素剤を食品と一緒に密封容器中に封入することにより容器内の酸素を吸収除去し、食品と酸素の接触を抑えます。

 その効果を「コーン油添加アラレ」で試験した結果が以下の図になります。

図. コーン油添加アラレ(抽出油)の過酸化物価の経時変化 [2]

 この図の試験では、コーン油添加アラレに脱酸素剤(三菱ガス化学株式会社製エージレスパック)を封入し包装(エージレスパック0.1%02以下)したもの、脱酸素剤を利用せずに包装内の酸素濃度をコントロールしなかったもの(空気(21%02))、そして包装内の酸素濃度を5%、2.3%、1.3%、及び0.2%にコントロールしたものの、37℃・暗所における180日間の保存状態を評価したもので、アラレに含まれる油脂の過酸化物価の変化を経時的に分析した保存試験です。[2]

 脱酸素剤を利用していない空気(21%02)では、180日目で過酸化物価が100meq/kg近くまで上昇し、著しく劣化が進んでいることがわかる一方、脱酸素剤を封入しているエージレスパック0.1%02以下では過酸化物価の上昇が抑制されていることから、その効果は大きいといえます。

 また、この試験結果からも包装容器内の酸素濃度をコントロールすることにより、 油脂食品の劣化を制御できることが示されています。

 この試験では食品として「コーン油添加アラレ」で行われていますが、他の食品でその効果を利用したい場合は、実際に対象の食品で保存試験を行って確認をすることが必要です。

関連コラム:「酸化した食用油の毒性と品質指標」へ

参考文献

[1] 三菱ガス化学株式会社ホームページ
https://www.mgc.co.jp/products/sc/ageless/index.html DL 2019.10.02

引用文献

[2] 三菱ガス化学株式会社ホームページ
https://www.mgc.co.jp/products/sc/ageless/effect/02.html 上図 DL 2019.11.02

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