食品ブランドの価格的付加価値
食品分野の知的財産は、特許権よりも商標権の取得・活用が他の分野と比較して多いという特徴があります。
近年では、商標のみならず食品技術でも特許で保護をしていく動きが大きくなっていますが、それでもなぜ商標権の取得や活用に積極的なのでしょうか?
この問いのヒントになる話がありましたので、少し紹介させて頂きます。
お話の元ネタになるのは日本弁理士会が発行している「パテント」という誌からです。
その2014年7月号、タイトル「食品に関する知的財産について」の中で、著者がマグロ赤身を使用してパネラーに言語情報による価格への影響をテストしたことが述べられています。[1]
その内容とは、マグロ赤身で「解凍マグロ刺身」と「生マグロ刺身」をそれぞれ情報を「開示せず」に試食してもらい、解凍マグロを100gで400円として生マグロの価格を答えてもらうと、ほぼ同額(398円)の価格評価であり、感覚のみの情報では評価は大きく変わらないことがわかったとのことです。
一方で、今度はパネラーに生マグロ、解凍マグロの刺身であるとの情報を開示して試食してもらい価格評価を行ってもらったところ、生マグロの方が85円近く高く(483円)評価されたとのことです。
つまり、「マグロ」を「生マグロ」と表示することで、価格でいう付加価値が2割近くアップしたといえると思います。
著者はさらに、パネラー数も多くなく、十分な検証とは言えないとしながらも、明らかに言語情報に人が左右されていることが伺えると述べています。
食品は、非食品の製品と違い、その物としての機能価値に加え「言語情報」が価値に影響を与える特徴をもち、そのことを食品に携わる人であれば肌で感じ、もしくは知っているからこそ商標重視の知財戦略が多くなるのかも知れません。
参考文献
[1]鈴木 徹 「食品に関する知的財産について」パテント(日本弁理士会) 67(8), 41-47, 2014-07(https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201407/jpaapatent201407_041-047.pdf)DL 2019.11.8