酸化した食用油脂の毒性と品質指標

食用油脂の酸化は、即席めんなどの油性食品の品質に重要な影響を及ぼします。特に、油の酸化に伴う二次生成物アルデヒドの発生は、食品の品質を低下させる要因の一つです。

これらの二次生成物のうち、アルデヒドやケトンは過酸化脂質の分解により増加し、徐々に減少します。そしてカルボン酸は加水分解により時間依存的に増加します。酸化した食用油脂の異味や毒性は、これらの二次生成物によるものです。

この現象につきましては、以前に公開したコラム「劣化食用油脂の毒性と食中毒」で解説していますので、どうぞご覧ください。

ここで興味のあるところは、その二次生成物の毒性と過酸化物価や酸価などの品質指標との関係性ではないでしょうか。

このテーマについて、塩澤ら[1]は、パーム油、ラードと大豆油を50℃、70℃、90℃のそれぞれの温度で酸化加速試験を行い、その際の酸価(AV)、過酸化物価(POV)とカルボニル価(CV)の挙動を調べ、GC/MS法による香気分析の結果と対比し、5つの不飽和アルデヒド(t-2-heptenal, t-2-octenal, t-2-decenal, t-2-undecenal, t,t-2,4-decadienal)の合計量と過酸化物価に強い相関があることを明らかにしました。

この5つの不飽和アルデヒドはこの研究の中で、強い毒性を有することが認められている二次生成物です。

特にt,t-2,4-decadienalは、この5つのアルデヒドの中で毒性が最も強く、National Toxicology Program(米国立毒性学プログラム)ではNOAEL(無毒性量)が100mg/kg/日、ADI(一日摂取許容量)が1mg/kg/日であるとされています。

一方で、WHO世界保健機関がまとめたデータでは、t,t-2,4-decadienalのNOAELは34 mg/kg/日であることが示されており、このWHOのNOAELデータと日本人の一日平均油分摂取量、および上記の5つの不飽和アルデヒド合計量との相関関係で得られた相関式より算出した上限の過酸化物価は「42.8~70.9meq/kg」でした。

他方で、日本における食品の品質や安全性を管理するための標準的な指標である過酸化物価30meq/kg(即席めん類など)や50meq/kg(揚げ菓子等)は、過去の食中毒事件をきっかけに導入されましたが、その妥当性を裏付ける科学的根拠は明確であるとは言い難い面があります。

そのため、このような食品安全観点の科学的根拠を踏まえた指標が望まれるところです。

参考文献

[1] “Re-evaluation of Peroxide Value as an Indicator of the Quality of Edible Oils” 食品衛生学雑誌48 巻 (2007) 3 号

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