「特許訴訟制度」改正をわかりやすく解説!

 今回、訴訟制度を改善すべく特許法が改善され、本年4月1日に施行されました。

 どのような改正かと申しますと、特許訴訟制度の見直しです。同時に意匠法も改正されましたが、このコラムでは特許訴訟制度についてお話をしたいと思います。

 結論から述べますと、特許侵害を立証しやすくするための「査証制度」を初導入しました。いわゆる立ち入り検査のような制度です。

 そして、特許侵害に係る損害賠償額の認定範囲が広がりました。

 この制度に関しては、以前、弊所ホームページで少し触れています。

 2019.3.7ブログ「特許侵害、立ち入り検査導入へ」

 以下、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

これまでの特許訴訟制度の課題

 特許には大きく「物」と「製造方法(生産方法)」の発明に分けられます。物(=製品)などは特許権者が侵害を疑う競合社製品を入手し、分解等の調査を行うことで侵害か侵害をしていないかがわかる場合が多いと思いますが、特に製造方法の場合、競合社の製品を分解しても、それが自社の特許を使って製造されたものかどうかなどが分かりません。つまり、侵害している証拠は、侵害したと思われる相手方の工場の生産ラインなどにあるわけで、そこに行ってみないと分からないことが多いのです。今までの制度でも裁判所が書類の提出を要求するなどはできましたが、それでは十分な証拠は得られない場合が少なくありませんでした。

そこで証拠収集をしやすくするために「査証制度」を新たに導入

 今回改正によって新設された査証制度では裁判所が中立的な立場の技術専門家に依頼し、侵害したと思われる相手方の工場などを訪れて製造設備等を調査して証拠を集め、その結果を裁判所に報告します。この査証制度によって権利を侵害していることを立証しやすくなることでしょう。

 一方で、この査証制度によって容易に立ち入り調査ができるわけではありません。この法改正を議論していく過程でいくつかの課題が指摘されました。

・工場などに立ち入り調査が行われることで侵害したと思われる側の営業秘密が漏れるのではないか。

・制度を悪用されるのではないか。

 これらの課題に対して、査証が認められるための要件を厳しくして悪用を防ぐとともに、証拠として必要のない営業秘密は黒塗りにされる仕組みが取入れられています。

 また、ここで気になるのが「裁判所が中立的な立場の技術専門家」(=査証人)とはどのような人なのかという点です。

 まだ具体的には決まっておりませんが、

・知財関係の訴訟で選任されている専門委員

・弁護士会や弁理士会から推薦される弁護士や弁理士

・各種学会から推薦された者

 と国会の経済産業委員会で議論されており、今後具体的に決めれていくと思います。

損害賠償額の算定方法を見直し

 今までは特許権侵害の損害賠償は、権利者側の生産・販売能力の範囲内でしか認められませんでした。そのため、侵害者が多くの製品を売って巨額の利益を得ていたとしても権利者の生産・販売できる能力分の金額しか支払われませんでした。これでは規模の小さな事業者には不利で大きな不公平感があります。

 そこで、今回の法改正により権利者の生産・販売能力を超える部分の損害も認められることになりました。

 どのように認められることになったというと、権利者の生産・販売能力を超える部分については、ライセンス契約があった場合に権利者に支払われたであろう金額が損害賠償として認められることになりました。

まとめ

 このような制度は日本が初めてではなく、米国やヨーロッパにそれぞれ独自の制度があります。このなかでヨーロッパは裁判所主導で侵害したと思われる相手方の工場などに立ち入り証拠集めなどを行うことができ、それを拒否すると刑事罰が課せられる国もあります。日本はこのヨーロッパ方式を採用したともいえます。

 「どうせわからないからいいんじゃない」とか、「バレなきゃいいんだよ」というのは言語道断ですが、正当な理由において疑義が生じている場合は、その点をこの制度のもとで明確にすることができることにより、知的財産権の価値はさらに高まり、その礎をより強固なものに導かれることでしょう。

[参考文献]

・特許庁ホームページ「特許訴訟制度改正について」https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol43/07_page1.html ダウンロード日2020.4.21

[写真]パンダの中のパンダさんによる写真ACからの写真

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