「油味」が6番目の基本味に?

 「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」の5味が基本味としてよく知られています。これら基本味は以下の提唱されている定義を満たしているため、基本味として世界中で受け入れられています。

1.生態系への影響がある。

2.独特の種類の化学物質によって起こる。

3.特殊な受容体の活性化に由来する。

4.味覚神経を通じて検出され、味覚中枢で処理される。

5.他の基本味と重ならない味質をもつ。

6.行動や生理的反応を引き起こす。

 油脂は唾液に含まれるリパーゼにより脂肪酸となり、舌に存在する味細胞とその信号を伝える神経によって味が認知されるのですが、この脂肪酸は「うま味」、「甘味」と味が重なり、「5.他の基本味と重ならない味質をもつ」という条件を満たすのに十分なエビデンスが少ない状態でした。

 しかし、脂肪酸を受容する可能性が示唆されていた味蕾細胞の受容体のうち、受容体GPR120を発現しないマウス(GPR120-KOマウス)での試験で、うま味物質(グルタミン酸)とリノール酸の区別がつけられなっかたことが明らかになり、受容体GPR120が脂肪酸の味と他の味を区別するのに重要な役割を果たすことがわかりました。

 つまり、他の基本味と重ならない脂肪の味質を伝える神経である受容体GPR120を発見したことによって、油脂の味の完全な独立性が示されたことは、5番目の定義を満たす決定的かつ神経科学的な証拠になるといえます。

 近い将来、「油味」が6番目の基本身味になるかも知れません。

参考:「油脂の味は6番目の基本味か? – “脂肪酸を感知する神経”とその役割を探る」

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