戦争と食用油脂~これからの食用油はどうなるのか
ロシアによるウクライナ侵略の影響は、食糧の面でも暗い影を落としています。
コロナ禍から多種の食品の値上げが続いている中、さらに戦争によって食品の価格は上昇を続けるということが現実味を帯びてきています。
今回のテーマである「戦争と食用油脂」。昨年の初めから食用油の価格上昇が始まり、大豆油卸売価格でみると、2021年2月の16.5kg当たり3,750円であったものが、同年10月には5,650円にまで達し、現在(2022年2月)まで高止まりしています。1)
この戦争は食用油脂にどのような影響を及ぼすのでしょうか。その観点で考えてみたいと思います。
世界三大生産量油脂であるパーム油、大豆油と菜種(キャノーラ)油。ISTA Mielke社「Oil World」2020/21年報によれば、2020/21年見込みでパーム油が76,772千トン、大豆油が60,277千トン、次いで菜種油が26,126千トンとなります。
それでは生産量4番目の油種はというと、「ひまわり油」の18,915千トンで、生産量の多い食用油です。
この「ひまわり油」が話の主役になります。
ひまわり油の生産量が一番多い国はご存知でしょうか?
それは「ウクライナ」で、次いで「ロシア」となっています。ウクライナのひまわり油の生産量が同じく2020/21年見込みで5,823千トン、ロシアが5,250千トンですから、ひまわり油シェアでみるとこの二国で全体の58.5%、約6割を占めています。
一方で現状は、ロシアでは世界的に貿易等取引ができない状態であり、ウクライナは農家が国外に避難する、農地・設備が被害を受けるなどで作付けすらできないか、できたとしても海路を絶たれているため、輸出もままならないのではないでしょうか。
そうすると、この油脂量の需要分は、他の油種で代替する他はなく、さらに世界三大生産量油脂の需要が増すのではと思われます。
あくまでも個人的な予想に過ぎませんが、価格が高止まりしている油種にさらに需要が高まり、そして円安が続けば、懸念される方向へ進むことが考えられます。
「4月に食用油値上げ21年以降5度目」2)、「食用油値上げへ去年4月以降5回目」3)、「食用油、また値上げ1キロ40円以上」4)等々、報道されているとおり、食用油脂メーカーも非常に苦しい状況にあると想像します。
未だ先の見えない食用油脂の動向。ほぼ輸入に頼る現実において、いかに安全で品質を維持しながら食用油を長く使うか、節約できるかがさらに求められるでしょう。
【参考文献】
1)月刊油脂2022年4月号「資料」幸書房
2)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC176NX0X10C22A2000000/ 日本経済新聞Web, 2022.2.17
3)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211112/k10013344651000.html テレビ朝日, 2022.2.24
4)https://www.jiji.com/jc/article?k=2022021701026&g=eco 時事ドットコムニュースWeb , 2022.2.17