かつてない食用油脂価格高騰と苦悩する調理現場
フライ調理現場を含め食用油脂を取扱う現場では、かつてない食用油脂価格高騰に、悲鳴にも似た声が上がっています。
月刊油脂2022年1月最新号(幸書房)の資料によれば、大豆油卸売価格において、平成31年と令和2年では16.5kg当たり3,750円でほぼ安定していたものが、令和3年に入り急激に上昇し、11月時点の価格は5,650円と1,900円も上がりました。その傾向は未だに落ち着く気配を見せません。
ナタネ油卸売価格も令和2年までは16.5kg当たり3,750円であったところ、11月時点の大豆油卸売価格とほぼ同様となっています。
また、パーム油やコーン油、米油などの他の油種も一様に高騰しており、調理現場は「八方塞がり」状態です。
この食用油脂の高騰は、日本だけの現象ではなく、世界的なものであるため、大手食用油脂メーカーは令和3年の間に、4回の値上げを行いました。この1年で4回という数字は、かつてリーマンショックで食用油脂が大きく値上がった時ですらなかったことです。調理現場のみならず、食用油脂メーカーにおいても苦しい1年ではなかったでしょうか。
なぜ、このような価格高騰を招いているのでしょうか。もちろん、コロナ禍が大きく影響していることは間違いありません。その理由は大きく以下にまとめられます。
①油糧原料である、大豆とナタネの一大生産地である北米の天候不良で生産量減
②中国などのコロナ禍からの経済活動正常化で需要が著しく増加
③脱酸素社会を目指し、バイオ燃料向け需要の増加
④海上輸送運賃(油糧原料はほぼ輸入に頼る)が原油高騰などにより上昇
⑤急激な円安による取引コストの上昇
世界で最も生産されているパーム油についても、大豆油やナタネ油などと同様にその油価格が上昇しています。その理由は、パーム生産地であるマレーシアとインドネシアにおいて、新型コロナ感染拡大により、パーム農園での働き手が確保できず、生産が需要に追いついていないといわれています。
これは一時的なものか? それとも、この状況は続くのか?
この質問に返す回答は明確ではありませんが、一時的なものであるという根拠は今のところ見当たりません。
これらを背景に、弊所へのお問い合わせが非常に多くなりました。
「色々と食用油の劣化防止策をしているが、なかなか期待どおりの結果が得られない。」
「どのようにしたら、フライ油の使用量を減らすことができるのだろうか?」
お話をさせて頂きますと、自社サイドで出来うるトライアルをして、その結果、お問い合わせを頂いているケースが多く、さらなる効果を求めておられると感じます。
このような関係で、近年では特に企業様のフライ現場に足を運び、技術支援を行うことが多くなりました。
やはり、できうるトライアルをした上でご相談頂いているため、現場を隈なく確認をしなければ、効果のある技術支援は出来ないと考え、お手伝いをさせて頂いております。
また、加熱耐性のあるフライ油種への変更という手段もあるのですが、その油種を変えることにより、本来の特徴風味が変わってしまうため、油種変更を選択しない企業様もおられます。
そこで、フライ油の取り扱い運用、調理工程の設備、品質管理状況などの油脂を取り扱う上で大切なポイントを現場で、実際に見て改善点を検討することにより、有効な技術支援の可能性を高めています。
一方で、企業様の方で油脂劣化対応策を徹底し、短期的、中長期的な実施計画について専門家として評価をご依頼されるケースもあります。
これまでの対応や経験から、工場において細かい対策でも、積み重ねていくことが、その効果につながる一手だと思います。
先が見えない食用油脂高騰のこの状況において、可能な限りお力になれるよう、引き続き邁進してまいります。