パーム油のはなし その2
食用油コラム “パーム油のはなし その1”の続きです。
その1では、パーム油が世界油脂生産量No,1であること、用途が多彩であることなどをお話しました。
しかしその一方で、熱帯雨林を切り開きパームを栽培することにより自然環境や生物多様性に負の影響を与えていること、
他方で、その油脂が飽和脂肪酸の多い油脂であるがゆえに、利用し過ぎると飽和脂肪酸の摂取多過になるかもしれないこと、
そのうち、このコラムでは「自然環境や生物多様性」についてお話したいと思います。
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パーム油の需要が増大するにつれ、急速に農地拡大が進みそのマイナス要因が表れてきました。
- 急速な大規模プランテーション(農園)開発
マレーシア:1990年・170万ha→2005年・362万ha(約2倍の拡大)
インドネシア: 1990年・110万ha→2005年・365万ha(約3倍の拡大)
- 森林伐採による生物多様性の低下
森林消失による生物資源の喪失、動物と人間との軋轢の増加に伴う農作物被害 (オラウータン、ボルネオゾウ、スマトラトラなど)
- プランテーション・工場操業による環境汚染
搾油・加工における廃水、残渣による水質汚染等
- 農薬、肥料の使用による環境汚染、健康問題
- 地元住民、先住民の権利侵害
- 労働問題
低賃金、児童労働、不法就労など
これらの問題が次第に浮彫になり、パーム油は食用油脂として恒久的に利用・持続可能であるのか?という疑問や、マレーシアとインドネシアにおけるパーム農園の急速な拡大による環境への影響を懸念する声が世界的に高まりました。
「このままではいけない。」
そこで、課題解決のために産地、そして世界が動きだしたのです。
それが、
Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議)の設立です。
その頭文字を取って「RSPO」と呼ばれます。
本部はスイス・チューリッヒに置かれ、パーム油の供給関係者の協調とステークホルダー(商社、食品メーカー、消費材メーカー等)との対話により持続可能なパーム油の成長と消費を促進することを目的としています。
RSPOは、2004年に設立され2017年6月時点で会員数は世界89か国に及ぶ3,422の企業・団体からなります。
農園業者、加工・流通業者、金融、環境団体、NGOなどの会員で構成される大きな組織で、日本においても2018年5月末時点で会員・準会員含め87の企業が加盟しています。
RSPO加盟農園・生産企業は、定められた以下の8つの原則と43の基準に合致した運営をします。
- RSPOの持続可能なパーム油生産のための8原則(43基準)
1. 透明性の確保
2. 関係法令の遵守
3. 長期的な経済面・財務面の実行性の確保
4. 農園と搾油過程での最良技術の使用
5. 環境への責任、資源と生物多様性の保全
6. 従業員と地域住民への責任のある配慮
7. 新規プランテーションの責任のある開発
8. 主要な活動地域・分野での継続的な改善
RSPOに加盟し、この8原則43基準に沿った運営をすることで、持続可能なパーム油開発を実現し、その証としてRSPO認証を与えられるのです。そしてその農園・生産企業から製造されるパーム油は「認証パーム油」と呼ばれています。
出典:WWFジャパン「RSPOについて」https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3520.html
パーム油を取り扱うRSPO会員企業は、この認証パーム油「のみ」を取り扱うこと、非認証のパーム油と混合されることなく取引することで持続可能なパーム油開発に貢献しています。
パーム油生産の現場では、無計画でむやみな開発と決別し、自然環境、現地の人々などと調和し、計画的で持続可能な開発と生産に向けて取り組みを進めています。
もう一つの課題の「飽和脂肪酸」は、「パーム油のはなし その3」でお話したいと思います。
お読み頂きありがとうございました。