食用油脂の生産技術(5)油糧種子の生産から輸出入プロセス編

植物油の原料となる油糧種子(例:大豆、菜種、ヒマワリ、パームなど)は、グローバルなサプライチェーンの中で生産され、保管・輸送・加工されます。以下に、その一連の流れを工程別に説明します。

1. 油糧種子の生産

主な生産国:

・大豆:アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、中国など

・菜種(カノーラ):カナダ、EU、オーストラリア

・ヒマワリ:ウクライナ、ロシア、アルゼンチン

・パーム(PO):インドネシア、マレーシア

生産工程:

・栽培 → 収穫 → 簡易選別 → 一時乾燥

・輸送に適した状態まで水分を下げる(例:大豆なら13〜14%以下)

・サイロや穀物倉庫で一時保管

2. 生産地での保管

主な保管方法:

・サイロ(密閉式):温度・湿度管理が可能、長期保存向き

・倉庫(バンカーサイロ・フラット倉庫):短中期向き、コスト安

・バルクシステム:輸出用にバラ積みで積載しやすい形態

保管中の管理項目:

・温度・湿度の監視(カビ・虫害防止)

・定期的な撹拌や空気循環

・品質劣化(酸化、発熱)の防止

3. 輸出(生産国 → 加工国)

輸送形態:

・バルク輸送:パナマックス級タンカーなどの大型バルク船で輸出されることが多い。

・コンテナ輸送:小ロットや高品質種子向け(例:オーガニック)

輸出港からの流れ:

・穀物集荷施設 → 穀物エレベーター

・バルク船へ積み込み(船倉)

・輸出証明(品質、衛生、GM(遺伝子組み換え作物)の有無など)を添付

・数週間〜1ヶ月かけて加工国へ到着

4. 輸入(加工国での受け入れ)

主な輸入国・地域:

・中国、EU、インド、日本、韓国など

(日本は自給率が低く、特に大豆はほぼ全量輸入)

輸入港の設備:

・穀物専用バース(岸壁)

・アンローダー(吸引式・グラブ式)

・穀物搬送ライン(ベルトコンベア、スクリューなど)

・検査・通関 → 保税倉庫または加工施設へ

5. 輸入後の保管(加工前の保管)

保管先の種類:

・穀物サイロ(サイロプラント):港湾周辺に多い

・搾油工場の原料サイロ:工場に隣接または併設

・中継倉庫:内陸部へ輸送し、そこで保管される場合も

保管管理:

・温湿度管理による劣化防止(発酵・虫害)

・殺虫剤(臭化メチル)によるサイロ内の燻蒸

・品種・等級・ロット管理

・搾油工程への供給スケジュールに応じて逐次投入

6. 物流と貿易の課題

・国際情勢(戦争、干ばつ、輸送費高騰)の影響を受けやすい

・非遺伝子組換え(Non-GMO)や有機認証があると物流が複雑

・保管時の品質劣化によって油の歩留まりや品質に影響が出る

以上が、油糧種子の生産から輸出入プロセスとなります。詳細には各段階で様々な技術的要素も含めあるのですが、この編では概要を説明いたしました。

メルマガ登録はこちらから

お問い合わせ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA