食用油脂の生産技術(4)続・油糧種子「世界油脂生産量4位以下(汎用油)」編
油脂の生産技術(2)では油糧種子である大豆と菜種、(3)ではパームの世界三大油種と呼ばれる世界油脂生産量第3位までの油糧種子を解説いたしました。
この編では、その他、世界油脂生産量第4位以下のメジャー油糧種子についてまとめてみました。

1. ひまわり種子 (Sunflower Seeds)
- 主産地:
ロシア、ウクライナ、アルゼンチン、アメリカ、中国 - 含油分:
約40~50% - 脂肪酸組成の特徴:
リノール酸(オメガ6)が豊富(50~70%)。一部高オレイン酸品種ではオレイン酸(オメガ9)が80%以上含まれる。 - 製造された油脂の主な用途:
- 食用油: サラダ油、炒め油、ドレッシング用油。
- 工業用途: 塗料、石けん、化粧品。
- 健康食品: ビタミンEを多く含み、抗酸化作用がある。
2. コーン胚芽 (Corn Germ)
- 主産地:
アメリカ、ブラジル、中国、アルゼンチン、ウクライナ - 含油分:
約35~40% - 脂肪酸組成の特徴:
リノール酸(オメガ6)が50~60%、オレイン酸(オメガ9)が20~30%、飽和脂肪酸は低め。 - 製造された油脂の主な用途:
- 食用油: コーン油(揚げ油、サラダ油として利用)。
- 工業用途: バイオディーゼル、石けん、化粧品。
- 健康食品: トコフェロール(ビタミンE)が豊富で抗酸化性が評価される。
3. 紅花種子 (Safflower Seeds)
- 主産地:
インド、アメリカ、メキシコ、エチオピア、中国 - 含油分:
約30~40% - 脂肪酸組成の特徴:
リノール酸型:リノール酸が70~80%。
オレイン酸型:オレイン酸が75%以上含まれる。 - 製造された油脂の主な用途:
- 食用油: 高品質サラダ油やドレッシング油。
- 工業用途: 塗料、ニス、化粧品の材料。
- 健康食品: コレステロール低下作用が期待される。
4. 綿実種子 (Cottonseeds)
- 主産地:
インド、中国、アメリカ、パキスタン、ブラジル - 含油分:
約15~25% - 脂肪酸組成の特徴:
リノール酸(オメガ6)が50~60%、オレイン酸が15~25%、飽和脂肪酸が約20%。 - 製造された油脂の主な用途:
- 食用油: 綿実油(サラダ油、揚げ油として使用)。
- 工業用途: 石けん、洗剤、化粧品の材料。
- その他: 家畜飼料に利用されるが、グシフォール(毒性物質)の除去が必要。
5. 米糠 (Rice Bran)
- 主産地:
中国、インド、日本、インドネシア、タイ - 含油分:
約15~23% - 脂肪酸組成の特徴:
オレイン酸(オメガ9)が40~50%、リノール酸が30~40%、パルミチン酸(飽和脂肪酸)が15~20%。 - 製造された油脂の主な用途:
- 食用油: 米糠油(炒め油、ドレッシングに使用)。
- 工業用途: 石けん、化粧品、医薬品。
- 健康食品: γ-オリザノールやビタミンEが豊富で、抗酸化作用やコレステロール低下が期待される。
6. オリーブ果実 (Olives)
- 主産地:
スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコ、モロッコ - 含油分:
約15~25% - 脂肪酸組成の特徴:
オレイン酸(オメガ9)が70~80%と非常に多く、リノール酸が5~15%、飽和脂肪酸が5~15%。 - 製造された油脂の主な用途:
- 食用油: オリーブオイル(料理用、ドレッシング、健康食品として利用)。
- 工業用途: 化粧品、医薬品、石けんの原料。
- 健康食品: 抗酸化作用が高く、心血管疾患予防効果が期待される。
7. ゴマ種子 (Sesame Seeds)
- 主産地:
インド、ミャンマー、スーダン、中国、タンザニア - 含油分:
約45~55% - 脂肪酸組成の特徴:
オレイン酸(オメガ9)が40~50%、リノール酸(オメガ6)が35~45%、飽和脂肪酸が10~15%。セサミンやセサモールなど特有の抗酸化成分を含む。 - 製造された油脂の主な用途:
- 食用油: ゴマ油(料理用や香味油として使用)。
- 工業用途: 石けん、潤滑油、化粧品。
- 健康食品: セサミンやセサモールが抗酸化作用を持つ。
これらの油糧種子は、それぞれの脂肪酸組成と機能性成分に応じて、食用・工業用・健康食品に多岐にわたって利用されています。脂肪酸のバランスや特有の成分が、健康志向や用途に影響を与えています。