「インドネシア、パーム油を全面禁輸」でこれからの食用油はどうなるのか?

2022年4月28日配信AFPBB Newsによりますと、

「インドネシアは28日、パーム油の全面禁輸を開始した。世界最大のパーム油生産国の措置により、価格高騰に見舞われている植物油の国際市場が不安定化する恐れがある。」

との一報が伝えられました。

全面禁輸の理由は、インドネシア国内で食用油が品薄になり、価格も高騰していることから、社会不安につながりかねない状況と懸念し、国内への供給量を確保するため禁輸に乗り出したとのことです。

これは非常にショックなニュースと受け止めています。

なぜならば、パーム油は食用油脂の中でも生産量が最も多く、チョコレートから化粧品まで幅広い製品の原材料に使われている多用途な油種であるためです。

そして、その生産量と輸出量が最も多い国が上記ニュースにあるように、インドネシアなのです。

世界三大油種とよばれるパーム油の2020-2021年(見込み)生産量は76,772千トン、大豆油で60,277千トン、菜種油(キャノーラ油)が26,126千トンです。そして、その次にロシアとウクライナが主要生産国のひまわり油で18,915千トンとなります。(※)

この数字を見てみても、パーム油が生産量世界一の油種であり、いかに多く生産されているかがわかります。

さらに、パーム油の生産国と生産量をみてみますと、インドネシアが2020-2021年(見込み)で45,570千トン(全体の59.4%)、次のマレーシアの18,420千トン(全体の24.0%)と、その生産量、輸出量共にインドネシアが圧倒的に多いのです。(※)

この「インドネシアがパーム油を全面禁輸」したということになります。

弊所の過去ブログ「戦争と食用油脂~これからの食用油はどうなるのか」(2022.2.23配信)で述べましたように、世界第四位の生産量を誇る「ひまわり油」がウクライナ情勢による供給懸念を受け、食用油脂全体の供給不安を招き、さらなる油価格の高騰を引き起こす可能性が指摘されております。

コロナ禍においては、ウクライナ情勢前からも、原油高騰や天候不良などの要因が重なり、油価格の上昇が著しく続き、国内でも類を見ない値上げとなっております。

そして、今回の「インドネシア、パーム油全面禁輸」が食用油相場のさらに不安定とする要因となるのは必至と思います。

そのため、今回の「パーム油全面禁輸」は食用油脂にとって「トリプルショック」といえるでしょう。

もちろん、日本でもフライ油やマーガリン、ショートニングなどに、多く使用されている油種でありますので、当然のことながら負の影響が大きいのではないかと思います。

このような現実と、これからもたらされる影響に、食品企業として、食品技術者として、どう向き合うのか、どう対処するのかが試される時ではないでしょうか。

(※)生産量出典:ISTA Mielke社「Oil World」2020/21年報ほか各年版

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