食用油の未来予想

 最近、次々と食品の値上げが発表されていますね。

 食用油も、忘れた頃に値上げが発表されるような状況ではあります。 そこで今後はどうなるだろう?というのが気になるところです。このコラムでは、そこのところを少し考えたいと思います。

 まず、食用油はどのように生産されているか、から少しお話したいと思います。

 身近な食用油といえば「キャノーラ油」。この油を生産するのに必要な原料は「菜種」です。黄色のとてもきれいな花を咲かせる菜の花はご存知だと思います。花が咲き終わると種ができ、それが菜種です。あの小さな粒に約40%もの油が含まれているのです。

 ですが、この菜種。搾油用としてほぼ100%、カナダやオーストラリア等からの輸入に頼っているのはご存知でしょうか?

 他にも大豆油。「穀物」の大豆から搾油し生産しています。この大豆もほぼ輸入に頼っているのが現状で、油を搾る搾油用の大豆はほぼ100%がアメリカやブラジル等からの輸入です。

 店頭でよく見かけるコーン油もコーンの胚芽から採油するのですが、その胚芽も、菜種や大豆と同様にアメリカからの輸入に頼っているのです。

 なので、食用油の未来予想をするには、世界の穀物の状況や動向を知ることが必要です。 そこで、少し世界のそれらを見てみましょう。

 まずはじめに、農林水産政策研究所の資料で「世界の穀物及び大豆の需給と世界人口の動向」を見てみたいと思います。以下の図1に示してみました。

図1.世界の穀物及び大豆の需給と世界人口の動向/出典:「世界の食料需給の動向と中長期的な見通し」農林水産政策研究所(https://www.maff.go.jp/primaff/seika/attach/pdf/180314_2027_02.pdf

 人口の推移を見てみましょう。日本では少子高齢化に伴い人口の減少が進んでいますが、世界に目をやるとその状況は一変、人口が増加しているのです。現在の世界人口は、推計で約76億人(2018年推計)、国連によりますと2050年には95億人にまで増えると予想されています。

 一方で、その食糧となり、食用油の原料ともなる穀物はどうでしょうか。穀物等需要量に対してその生産量に余裕があるとは到底思えません。そう、ギリギリな状態と表現しても大げさではないと思います。

 他の報告によりますと、世界の耕作面積の増減と穀物生産量について、その耕作面積は、増えておらず、穀物の生産量が増えているというデータがあります。このことの意味は、耕作面積は広げている一方で、地球温暖化の影響等で耕作が出来なくなった面積も増えていることにより、その面積に増減がないと言われています。そして穀物の生産量ですが、遺伝子組み換え作物や、灌漑等の農業技術の進歩に伴い増加しているものの、耕作面積が広がらない以上、その生産量にはいずれ限界がくるという説があります。

 次に、これも農林水産政策研究所の資料からですが「国際穀物等価格の推移」を示したのが以下の図2です。

図2.国際穀物等価格の推移/出典:「世界の食料需給の動向と中長期的な見通し」農林水産政策研究所(https://www.maff.go.jp/primaff/seika/attach/pdf/180314_2027_02.pdf

 穀物価格の推移を見てみますと、2008年に大幅な価格上昇がありました。これは記録的な不作がアメリカを中心とした海外で発生した年です。その原因も一説には地球規模の異常気象が原因であるといわれていますが、このように、気候次第で食料や油糧原料となる穀物が大きく影響を受けることがわかります。そして、2006年以降、上昇傾向にあるといえると思います。 このような状況も踏まえ、将来、食料の消費量は以下のようになるのではないかという予想があります(図3)。

図3.世界の主要品目の消費量の変化/出典:「世界の食料需給の動向と中長期的な見通し」農林水産政策研究所(https://www.maff.go.jp/primaff/seika/attach/pdf/180314_2027_02.pdf

 なんと、食用油の消費量は、2002年-2004年を100とした時に、あまり遠くない2027年にはその2.2倍になるというのです。

 さらに、その価格の予想が以下の表1のように予想されています。

表1.世界の各品目実質価格の増減率/出典:「世界の食料需給の動向と中長期的な見通し」農林水産政策研究所(https://www.maff.go.jp/primaff/seika/attach/pdf/180314_2027_02.pdf

 世界ベースの予測データではありますが、2014年―2016年と対比した2027年の食用(植物)油の価格は、18.4%上昇するとの予想です。これはのバターの価格上昇予想の次に大きい数字です。(バターも食用油脂でありますが。)

 これまで、世界人口の動向、世界の穀物生産の状況と価格の変動、およびそれらを踏まえた食料の消費量と価格予想を見てきました。

 いかがでしょうか?

 繰り返しになりますが、日本の食用油は、ほぼ「輸入」に支えられているという現実があります。一方で、穀物は農産品でありますからその出来高は天候や気候に左右されてしまいます。世界的な異常気象が地球規模で発生しているなか、今後、穀物やその他の農産品の安定した供給や価格相場が保障されているとは言い難く、近々に厳しい状況におかれてしまう可能性すらあり、「今、そこにあるリスク」といっても過言ではないように思います。

 さて、この先、食用油の供給に問題はなく、価格に変化はない、または下がると思われますでしょうか?

 これらの現実や予想を考えるに、とても楽観的な未来予想はできません。

 むしろ、未来においては世界的に穀物や食用油の争奪戦が繰り広げられるのではないかと心配になってしまいます(すでに起こっているという説もありますが)。

 これらに対して、食品に携わる私たちは、何をすべきなのか、どう心掛けるのかを、今から考えておくことが大切なのではないでしょうか。

 それは、食用油を長持ちする使い方やおいしさを引き出す使い方など、賢く使いこなす技術を駆使できるようにしておくのも一つの手段と考える次第です。

 「アブラ」のこと、少し考る機会として下さりますと大変幸いです。

 お読み下さり、ありがとうございました。

(・・・ご感想などを残して頂けますと大変幸いです。)

次号予告です。

 このコラムでは、主に穀物、そして穀物から採油される食用油について述べましたが、2003年~2004年ごろから世界の油脂世界生産量ナンバー1であった「大豆油」を「パーム油」が抜き、世界生産量ナンバー1の食用油となりました。次号では、その「パーム油」について様々な観点から述べたいと思います。

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